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韓国特許法院、韓国消費者向け海外オンライン譲渡の申出を特許侵害と認定

  • September 30, 2025
  • 鄭恩恵弁理士

特許法院は、海外企業が海外電子商取引プラットフォームや自社ウェブサイトに特許侵害製品を掲載・広告し、韓国の消費者を直接的な対象とした場合、これは韓国特許法上の特許侵害の一種である「譲渡の申出」に該当する旨の判決を下した。本判決は、オンライン商取引環境において属地主義の原則を拡張的に解釈し、海外で行われたオンライン行為に対しても韓国特許権の効力が及び得ることを確認した点で重要な意義を有する(特許法院2025.5.22.宣告 2023Na10693判決、確定)。

 

 

▶ 事件の背景

 

原告は、靴下編織機に関する韓国特許を保有するイタリアの会社である。被告は中国の会社であって、原告特許の権利範囲に属する製品を中国で製造した後、これを海外電子商取引プラットフォームおよび自社ウェブサイトに掲載して広告し、販売を誘導した。

被告は、オンラインで製品を掲載する際、韓国語で製品情報を提供し、韓国ウォンでの決済を可能にし、韓国内での注文および配送に対応し、さらに韓国の消費者を対象とした問い合わせおよび相談サービスも韓国語で提供した。原告は、これらの被告の行為が韓国特許法第2条第3項の「譲渡の申出」に該当するとして、特許権侵害差止訴訟を提起した。

属地主義の原則により、特許権はその登録国でのみ効力が及ぶため、本件の核心争点は、海外電子商取引プラットフォームや外国のウェブサイトに製品を掲載する行為が、韓国内における「譲渡の申出」と見なせるか否かであった。



▶ ソウル中央地方法院の判決 

 

ソウル中央地方法院は、原告の請求を棄却した。具体的に、法院は被告の掲載行為が韓国国外で行われ、申込者、目的物、価格など申出の全ての要素が韓国国外に存在するため、これを韓国内で行われた「譲渡の申出」と見なすことができないと判断した。また、法院は、単に韓国語のウェブページを提供したり、韓国ウォンでの価格を表示するだけでは、韓国内における譲渡の申出として認めるには十分ではないと述べた。



▶ 特許法院の判決


特許法院は、ソウル中央地方法院の判決を取り消し、原告の請求を認容した。まず、韓国国際私法第39条に基づき韓国法院の管轄権を認めた。韓国国際私法第39条第1項は、知的財産権侵害に関する訴えにおいて、「侵害の結果が韓国内で発生した場合(第2号)」または「侵害行為を韓国に向けて行った場合(第3号)」に韓国法院が管轄権を有すると規定している。これを踏まえて、特許法院は本件の重要な事実関係が韓国と実質的な関連性を有すると判断し、管轄権を認めた。

さらに、特許法院は、被告が韓国語で製品情報を提供し、韓国内で注文およびウォン決済を可能にしており、韓国の消費者を対象とした相談サービスも韓国語で提供した事実を総合的に考慮した。その結果、被告が海外電子商取引プラットフォームおよび自社ウェブサイトに製品を掲載した行為は、韓国内の消費者を直接的な対象としたものであって、韓国特許法上の「譲渡の申出」に該当すると判断し、原告の特許権の侵害に当たると結論づけた。



▶ 本判決の意義

 

今回の判決は、海外企業のオンライン活動が国外で行われたとしても、その行為が韓国消費者を実質的な対象とする場合、特許侵害と認められ得ることを明確にした初の判例となった。特に、特許権者が追加の法的手続きを経ることなく、税関で侵害物品の流入を阻止するための国境執行を請求できる根拠を設けた点で注目される。