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韓国大法院、分割特許の請求項解釈において原出願の審査経過を参酌できると判示

  • December 30, 2025
  • 李義在弁理士

最近、韓国大法院は、分割出願により登録された特許の請求項を解釈するにあたり、その原出願の審査経過を参酌して限定解釈し得るとの判決を下した(大法院2025年7月17日宣告2023Hu11340判決)。 

 

 

▶ 事件の背景 

 

発明の名称を「自己洗浄可能な浄水器」とする本件特許の請求項1には、「濾過部で濾過された水を用いて貯蔵タンクを洗浄できるように貯蔵タンクに連結され、洗浄手段を備える洗浄部」の構成が記載されていた。しかし、当該請求項には、「洗浄手段」に関する構造的・技術的定義または限定は記載されていなかった。

本件特許は原出願からの分割出願により登録されたものであって、特許権者は原出願の審査過程において拒絶理由を解消するため、原出願の特許請求の範囲に記載された「洗浄手段」には「電気分解方式により殺菌物質を生成して洗浄する手段」が含まれない旨の意見書を提出した。さらに、特許権者は、原出願の請求項1における「洗浄手段」を、「洗浄物質または殺菌物質を内部に含むフィルター、または洗浄殺菌剤のドージングシステムを含んで構成される洗浄手段」に限定する補正を行った。

このように原出願の請求項を限定した後、特許権者は分割出願を行い、当該分割出願が後に本件特許として登録された。

請求人は、特許審判院に消極的権利範囲確認審判を請求し、確認対象発明(請求人の製品)が本件特許の請求項1及びこれを引用する従属請求項10の保護範囲に属さないとの確認を求めた。

確認対象発明の説明書には、確認対象発明が濾過された水を電気分解して電気分解水を生成する電極殺菌器を含むこと、かつ電極殺菌器は洗浄物質または殺菌物質を含まないことが記載されていた。



▶ 特許審判院及び特許法院の判断 

 

特許審判院は、原出願の審査経過が分割出願に影響を及ぼすか否かについては判断しなかったものの、「洗浄手段」は「洗浄物質または殺菌物質を含む」ものと解釈した。その結果、特許審判院は、確認対象発明が本件特許の請求項1及び10の権利範囲に属さないと判断した。

これに対し、特許法院は、原出願と本件特許とでは請求項1の記載内容が異なり、本件特許の請求項が原出願のように限定されなかったことから、「洗浄手段」は「洗浄物質または殺菌物質が含まれたフィルター、または洗浄殺菌剤のドージングシステム」に制限されないと解釈し、確認対象発明は本件特許の請求項1及び10の権利範囲に属すると認定した。



▶ 大法院の判断 

 

大法院は特許法院の判決を破棄し、確認対象発明は本件特許の請求項1及び10の権利範囲に属さないと判断した。

大法院は、請求項が機能的表現を含み、請求項の記載だけでは技術的構成の具体的な内容を把握できない場合には、特許明細書に提示された技術的思想や、特許出願過程で示された出願人の意図等、諸般の事情を総合的に参酌して、その権利範囲を限定解釈し得ることを明確にした。

かかる法理に即して大法院は、(i)特許権者が原出願の審査過程において拒絶理由を解消するため、原出願の請求項1における「洗浄手段」には「電気分解方式により殺菌物質を生成して洗浄する手段」が含まれない旨の意見を提出した点、(ii)原出願と本件特許の出願人が同一である点、(iii)本件特許は原出願の願書に最初に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内の発明である点、(iv)特許権者は原出願の審査過程で請求項を補正した後に本件分割出願を行った点、を考慮すれば、本件特許の請求項解釈に際して原出願の審査経過を参酌することができると判示した。

その上で、大法院は、特許権者が本件特許における「洗浄手段」から「電気分解方式により殺菌物質を生成して洗浄する手段」を意識的に除外したものと認め、本件特許における「洗浄手段」は「洗浄物質または殺菌物質を内部に含み、その洗浄物質または殺菌物質を濾過部で濾過された水に希釈して貯蔵タンクに供給することによって貯蔵タンクを洗浄するための手段」と解釈するのが妥当であると判断した。これを踏まえ、大法院は、本件特許の「洗浄手段」は確認対象発明の対応構成と異なり、確認対象発明は本件特許の請求項1及び10の権利範囲に属さないと結論付けた。



▶ 本判決の示唆点 

 

本判決は、分割特許の特許請求の範囲を解釈するにあたり、原出願の審査経過、特に、原出願の審査過程で意識的に除外された事項を参酌し得ることを明確にした点にその意義がある。